大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(ネ)477号 判決

被控訴人は本件不動産に対する上記根抵当権が実行されると、子の不利益において親権者である百合の遅帯保証債務を免れることになるから、本件根抵当権の設定行為等は民法第八二六条にいう利益相反行為に該当し無効であると主張するので判断する。

親権者は子の財産につき処分を営む管理権を有し子を代表してその財産に関する法律行為をなす権限を有するのであるから、親権者が子の財産につき根抵当権、賃借権を設定しまた債務の不履行を停止条件とする代物弁済契約を結ぶことはその外形上親権者の権限に属することは明らかである。しかして親権者の行為が民法第八二六条にいう利益相反行為に該るか否かはその行為自体を外形的、客観的に考察して判定すべきであつて、当該代理行為をなすについての親権者の動機、意図を考慮して判定すべきでないと解するを相当とする(昭和三七年二月二七日最高裁判所第三小法廷判決、最高裁民事裁判集五八号一〇二三頁参照)。前記認定の事実によると青木百合が被控訴人を代表してなした本件根抵当権の設定等の行為は大田武志の控訴人に対する債務を担保するためになされたもので、親権者である百合の利益となるものではないから、その行為自体は前示法条にいう利益相反行為には該らないものというべきである。本件においては上記根抵当権設定等の契約の成立した後で百合自身が大田の控訴人に対する同一の債務につき連帯保証をしたものであることは前示のとおりであるので、右根抵当権の設定等の行為と連帯保証の行為との関係が問題となるが、上記債務に対する被控訴人の物上保証と百合の連帯保証債務は債権の担保として併存するものであり、その相互の間には必然的に利益、不利益の関係を生ずるものではない。もつとも被控訴人の主張するように、後に債務者の不履行により根抵当権が実行された場合には担保提供者である被控訴人の不利益において保証人である百合の保証債務が軽減される結果を生ずることはあり得る。しかしながら根抵当権の設定行為自体は保証人の責任を軽減するためになされるものではなく且つそのいずれの担保権を実行するかは債権者の自由に任されているのであるから根抵当権設定行為自体から右のような結果を生ずる必然性は存しない。このように考えると前認定の事実関係にある本件では同一債務について後から親権者自身が連帯保証人として加わつたからといつて、上記のような結果の生ずることを予想し遡つて本件根抵当権等の設定行為が利益相反行為であると解することは相当ではない。(民法第八二六条の利益相反行為に該るか否かは子の利益のためという観点からだけでなく取引の安全をも考慮して判定しなければならないのであるから、子の利益保護の万全を期するためには親権者の行う子の財産の処分行為については家庭裁判所の許可にかゝらしめる等立法的措置に俟つべきものという外ない)。

(石田哲 杉山 唐松)

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